※※ 感覚過敏のメカニズムについては、現代医学においても未だ十分に解明されていない部分があります。本解説は、現在の医学的知見および当クリニックでの診療経験に基づき、ペインクリニック・麻酔科学の視点から考察した内容になります。今後、新たな医学的知見が得られた場合には、内容を適宜見直し更新してまいります。 ※※
光と音のクリニックでは、ペインクリニック・麻酔科学を診療の基礎としています。
検査で痛みの原因を評価できないことは珍しいことではない
痛みは微細な組織の変化や神経機能の変化など、現在の検査では十分に評価することが難しい変化によって生じることがあります。
具体的な一例を挙げますと日焼けがあります。日焼けは皮膚の発赤などを引き起こして過敏性を高め、時には痛みを伴うこともあります。
日焼けは皮膚所見で診断することは容易にできますが、採血やCT・MRI・筋電図・脳波などの検査では評価は困難です。
例えば採血は体内環境の変化を捉える検査ですが、広範囲で重症な日焼けを除けば殆ど変化を生じません。
CTやMRIは体内の病変を画像として確認できますが、比較的大きな構造変化を評価する検査です。
脳波や筋電図は、神経や筋の電気生理の異常を対象としますが、微細な皮膚炎症を直接評価する検査ではありません。
つまり、病変部位の表面を直接観察することが難しかったり、直接組織を採取することができない場合に利用する検査機器では原因の特定は困難なことがあります。
眼や耳に明らかな病変が存在する場合には、眼科や耳鼻科の検査で診断できることが多くあります。
一方で、眼や耳は皮膚のように直接観察できる部分もありますが、大部分が内部の構造であるため、微細な組織変化や神経機能の異常などの特定について、現在の検査だけでは評価が難しいことがあります。
さまざまな刺激が痛みの原因になる可能性
痛みは手術の傷や怪我のような皮膚の損傷だけで生じるものではありません。傷以外でも、熱傷や凍傷などの温度や、圧力などでも生じます。
また、刺激臭や辛みに見られるように、皮膚以外の感覚である嗅覚や味覚なども強く刺激されると痛みに変わる場合があります。
そして刺激を知覚する神経の周囲には、基本的に保護となる組織(例.皮膚)があります。その保護組織が損傷した場合はごく軽度の刺激でも痛みとして知覚されます(例.擦り傷時のお風呂)。
このように、刺激の強弱も含めて、さまざまな刺激が痛みの原因になる可能性があります。
「環境が原因かも?」と思ったことはありませんか?
過敏な患者様にとっては、日常の光や音も強い刺激となることがあります。
特に光や音の刺激は日常環境で発生するため、
・生活・仕事の場で長期間にわたり持続的に刺激にさらされやすい
・共有スペースでは他者にも配慮するため刺激の調整が困難
などの特徴があります。
当初は軽度な刺激であっても、それが長期間続くことで刺激への耐性が低下したり、過敏性が高まることがあり、自律神経機能を乱すことがあります。
そして、自律神経機能の乱れは、手術など強いストレス時の反応と共通するような、動悸や発汗などの身体症状や、不安やパニックなどの精神的な反応を引き起こすこともあります。
生活環境の問診を重視
光や音による症状に悩む方に対して、症状に影響を与えている生活環境について詳しく伺うことが重要と考えています。
飲酒や喫煙を続けながら肝臓や肺の病を治療しても改善しにくいように、悪化要因への対策は症状改善に欠かせません。
保険診療では十分な対応が難しい生活環境の評価や、光・音環境の調整までを行う自由診療を、当クリニックは提供しています。
光と音のクリニックの診療
当クリニックでは、光や音による苦痛や自律神経の不調に対して、ペインクリニックの問診や診察技術や、麻酔科の自律神経のコントロール技術などの知見を活用して、一人ひとりの症状と生活背景に合わせた診療を行っています。
ペインクリニック・麻酔科の知見では、病などの心身の不調が自律神経機能を乱すことはもちろん、逆に不快な刺激によるストレスも自律神経機能を乱すことがあると考えられています。
そのため、心身だけではなく、環境も調整することで、ストレス源となる不快な刺激を減少させ、身体的・精神的な負荷を軽減し、症状の回復を試みます。
ペインクリニックの診察技術
ペインクリニックとは、痛みや身体的苦痛を専門的に扱う診療科です。
・組織の損傷や構造的な異常がなくても生じる苦痛(神経系の機能的な過敏状態)
・ストレスに伴う自律神経の過剰反応
などに対して専門的にアプローチできることが特徴です。
ペインクリニックが対象とする痛みや苦痛は、現代の医学ではまだ検査機器などによる数値・画像化が難しい領域です。
機器による測定が難しいからこそ、ペインクリニックでは問診や診察を重視しています。
光や音による感覚の問題も、検査や数値化が難しい特徴があります。
当クリニックではペインクリニックの臨床経験で培った多様な苦痛や痛みの知識を活かし、今まで検査などではわからなかった原因に対しても、問診や診察を通じて要因を整理し、生活上の対策を含めて検討します。
麻酔科の自律神経反応を安定化させるための知見
麻酔科では、手術に伴う侵襲やストレスによる自律神経反応を評価し、鎮痛・鎮静技術を用いてこれらの反応を抑制することで、身体的・精神的な安定を図ります。
手術の痛みはもちろん、手術の光景や音、処置に伴う皮膚の感触などは、身体的・精神的ストレスとしてとても強く、手術中の高血圧・頻脈・頻呼吸・多汗などの反応を生じるだけで無く、術後の回復期における睡眠障害やパニックを引き起こす要因となることもあります。
光や音によるストレスも自律神経機能を乱すことがあり、動悸や発汗などの身体症状や、不安やパニックなどの精神的な反応を引き起こすこともあります。
麻酔科が扱っているのは急性の強い侵襲による反応であり、光や音などによる慢性的で比較的軽度な刺激による反応とは異なります。
しかし、自律神経反応の評価や管理という観点では、光や音による症状にも応用できる知見が多くあるため、麻酔科の考え方を応用した診療を行っています。
いつまでも快適な生活を続けられるために
現在受診されている方は外出や仕事に支障が生じている中等度以上の患者様が主体です。
しかし、下記の特徴から、軽度の症状の方に早期の受診をして頂きたいと思っています。
・悪化するほど回復に長期の時間がかかる
・一度悪化をさせてしまうと、悪化させる以前の状態には回復しにくい
当クリニックを受診される患者様を拝見する限りでは、光や音によるダメージは、まるで肝臓や肺に対するアルコールやタバコのように、蓄積的な影響があるように思え、やはり早い段階で悪化の原因を特定し、重症化を防ぐことが重要と考えます。
人生100年時代ともいわれていますが、いつまでも美しい風景や、大切な人の笑顔などを見続けられる人生を送っていただきたいと願っており、未病対策としてもご検討いただきたいと思います。
<HP内容の著者>
澤田真如 麻酔科指導医(日本麻酔科学会)