麻酔が好き

私は麻酔が好きです。

麻酔の一般的なイメージは、痛みを感じることがなくなり、意識を失って寝てしまう状態だと思います。
しかし、この状態は外的な刺激(ノイズ)が入らない状態であるため、日々の複雑な生体の活動が、実はすごくシンプルで合理的な仕組みの組み合わせで成り立っていることを理解しやすい環境でもあります。
そのような生体の仕組みが見やすい環境に浸る日々を過ごすことで、次のような点に私は惹かれました。

  1. 呼吸・血圧・脈拍だけでなく脳機能や体温など、全身の複数臓器を同時に管理することにより、一つのシステムとして人体を扱えること
  2. 管理の主体は各臓器の調整を行う自律神経の制御であり、生体機能の調整やネットワークについて学びが多いこと
  3. 管理の方向性はホメオスタシスの維持であり、生命活動を安定させるコントロール技術が学べること
  4. モニター機器が充実しており、経時的に細かく観察でき、大量の情報が集まるため、学習素材が豊富なこと
  5. 麻酔で使用する薬や技術は一般的な治療とは異なり、意識を無くしたり、呼吸を止めたりするなど、どちらかというと仮死状態に近づける側面がありますが、手術による致命的な苦痛から生体を守る技術にもなっており奥深さを実感できること

私は生理学(生物としての機能的な仕組み)が好きなのですが、麻酔科は最も生理を体系的に扱うことができる科の1つと思っています。
光や音の問題を考える今でも、この「人体全体を一つのシステムとして見る」という考え方が診療の土台になっています。